プー関連本大賞2018「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」

この記事は「ディズニー関連ブログ Advent Calendar 2018」21日目の記事です。

2018年は『プーと大人になった僕』が公開され、様々な世代にプーが作品として受け入れられた一年でした。
2019年2月には渋谷Bunkamuraで「クマのプーさん展」も開催されます。
プーの住む不思議な世界の魅力が伝わっていく中で今年非常に良い本が出版されました。


グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実

FOXサーチライトから同名の映画が公開されており、この本は映画の原作として扱われています。
映画は「クマのプーさん」著者A.A.ミルンと息子クリストファー・ロビン・ミルンの史実を元にした物語です。
もちろんフィクション部分も多分に含まれますが、『プーと大人になった僕』が完全にフィクションとしてプーが与えた明るい世界を描いたのに対して、『グッバイ・クリストファー・ロビン』はプーにより人生の歯車が狂っていく現実の物語を描いています。
そんな史実を元にした映画の原作「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」は、著者A.A.ミルンの伝記なのです。

「クマのプーさん」には様々な関連書籍があります。
最近は名言ものや論語などと勝手に絡めたものが人気ですが、真剣にプーの背景を見る書籍も多くあります。
A.A.ミルンの自伝も出版されており、当然プーの背景を知るなら本人の話がいいだろうと思うでしょう。
自伝のタイトルは「今からでは遅すぎる」。
プーの人気で子供向け作家のイメージがついてしまい苦しむミルンの自伝なのです。
16章500ページにわたる伝記の中で、プーについて語られるのは2ページだけ。
幼少期からの自伝でミルンがプーを生む背景について知る部分は大いにありますが、当時のミルンの感情を差し引いて読む必要があり、いきなり自伝だけを読むのはおすすめできません。
そこで役立つのが「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」です。

ミルンの自伝が特殊な状況に置かれている中、プー史実において最も重要となっているのが、伝記作家のアン・スウェイトによる伝記「A.A. Milne: His Life」です。
著者が膨大な資料に当たって書かれたこの伝記は、あまりに詳しすぎるとも言われるほどの情報量。
伝記を書く際の資料だけでもう一冊、資料集が出版されています。
非常に詳しい伝記なのですが、残念ながら邦訳されませんでした。
資料集の方は「クマのプーさんスクラップブック」として邦訳版が発売されました。

映画『グッバイ・クリストファー・ロビン』は、史実を元にして描くにあたり、この詳しすぎる伝記を参考にしました。
このために「A.A. Milne: His Life」のプー関連部分の章だけを切り出したのが、映画の原作となる書籍「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」です。
そしてこの書籍が邦訳されました。
つまり、プー関連資料で最も参考になる伝記のプー部分が遂に日本語化されたのです。

訳者は山内玲子さんと田中美保子さん。
「訳者あとがき」には、この素晴らしい邦訳版が生まれた経緯が述べられています。

『A.A.ミルン その生涯』が発売されたときも、私は出版社を探そうと努力したが、実らなかった。いろいろな翻訳を手がけつつも、アンさんの作品を翻訳できていないことがずっと心残りだった。
ところが、昨年の夏、『グッバイ・クリストファー・ロビン』が出版され、映画にもなった、ついては、この本を田中美保子さんといっしょに日本語に訳してほしい、という思いがけない提案が舞い込んだ。しかも美保子さんのご縁で国書刊行会が出版を承知してくださったという、夢のような有難いお話であった。

(「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」p.328)

著者自身から指名され、「A.A. Milne: His Life」から邦訳を模索してきた訳者による渾身の一冊であることが明かされています。
待望の一冊であると共に、日本におけるプーへの理解を未来に渡って手助けし続けるであろう、非常に重要な一冊です。
この邦訳を実現させた国書刊行会への感謝も込めて、2018年で最も手に入れておきたい一冊です。

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コピーライト
(c)Disney. Based on the "Winnie the Pooh" works by A.A, Milne and E.H.Shepard.
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