『プーと大人になった僕』オープニングと「プー横丁にたった家」最終章を読み較べる

『プーと大人になった僕』のオープニングでは、少年クリストファー・ロビンが寄宿学校に通うため100エーカーの森を離れるシーンが描かれます。
これは、原作「プー横丁にたった家」の最終章にあたるシーンです。
映画では原作の最終章をどう描き直しているのか、そのセリフを見比べてみましょう。

イーヨーの詩

映画はお別れパーティーのシーンから始まります。
このシーンはディズニーで初めて触れるシーンです。
「プー横丁にたった家」最終章から、イーヨーが読むお別れの詩を見てみましょう。
Christopher Robin is going.
At least I think he is.
Where? Nobody knows.
But he is going.
I mean he goes
Do we care?
We do
Very much.
Those two bothers will have to rhyme with each other Buther.
The fact is this more difficult than I thought,
I ought
I ought
To begin again,
But it is easier
To stop
Christopher Robin, good-bye,
I
And all your friend
Send
Well, anyhow, we send our love.
End.
この詩のうち、太字部分が『プーと大人になった僕』でイーヨーが読む詩です。
短くしただけで、原作そのままであることが分かります。
直後の”If anyone wants to clap, now is the time to do it.”のセリフも原作そのままです。
映画ではその後パーティーではしゃいでプー以外が寝てしまいますが、原作ではこの詩をクリストファー・ロビンが読んでいる間に気まずくなってプー以外が立ち去ってしまいます。
そしてクリストファー・ロビンはプーを連れて「魔法の場所」へと出かけます。
映画内の会話
Come on, Pooh.
Where are we going, Christopher Robin?
Nowhere.
は原作のこのシーンのセリフ部分を繋げたものです。

一番好きなこと

What do you like to do best in the world, Pooh?
原作と映画に共通するセリフです。
それに対するプーの答えを原作から見てみましょう。
What I like best in the whole world is Me and Piglet going to see You, and You saying “What about a little something?” and Me saying “Well, I shouldn’t mind a little something, should you, Piglet,” and it being a hummy sort of day outside, and birds singing.
こちらも太字部分が映画のセリフです。
なお下線部Me sayingは映画ではI say。
この一文は直後のDoing nothingに繋がるための一文ですが、プーにとっての100エーカーの森の世界観が一文に凝縮されている名文です。

何もしないこと

続けてクリストファー・ロビンが一番好きなこと「何もしないこと」について説明します。
また原作から見てみましょう。
I like that too, “said Christopher Robin, “but what I like doing best is Nothing.”
“How do you do Nothing?” asked Pooh, after he had wondered for a long time.
“Well, it’s when people call out at you just as you’re going off to do it, What are you going to do, Christopher Robin, and you say, Oh, nothing, and then you go and do it.”
太字部分が映画のセリフ。
原作は本なので会話以外の部分がありますが、セリフ部分はほぼそのまま使用しています。
映画ではその後”Doing nothing often leads to the very best something.”という映画独自のセリフが加わります。
重要なキーワードとなるセリフです。

別れ

原作ではその後、学校で教えてくれることなどの話が入ります。
そして2人の間に沈黙が訪れ、最後の会話になっていきます。
原作より
“Pooh!”
“Yes?” said Pooh.
“When I’m -when- Pooh!”
“Yes, Christopher Robin?”
“I’m not going to do Nothing any more.”
“Never again?”
“Well, not so much. They don’t let you.”
Pooh waited for him to go on, but he was silent again.
“Yes, Christopher Robin?” said Pooh helpfully.
“Pooh, when I’m -you know- when I’m not doing Nothing, will you come up here sometimes?”
“Just Me?”
“Yes, Pooh.”
“Will you be here too?”
“Yes, Pooh, I will be, really. I promise I will be, Pooh.”
“That’s good,” said Pooh.
“Pooh, promise you won’t forget about me, ever. Not even when I’m a hundred.”
Pooh thought for a little.
“How old shall I be then?”
“Ninety-nine.”
“I promise,” he said.

映画版も書き起こしてみます。
P:Pooh.
C:I’m not going to do nothing anymore.
P:Never again?
C:Well, they don’t let you at the boarding school.
C:Pooh…
C:When I’m off not doing nothing, will you come up here sometimes?
P:Just me?
P:Where will you be?
C:I’ll be right here.
P:But what should happen if you forget about me?
C:I won’t forget about you, Pooh.
C:I promise.
C:Not even when I’m a hundred.
P:How old will I be then?
C:Ninety-nine.
C:Silly old bear.
P:Ninety-nine…
以上P:がプー、C:がクリストファー・ロビンのセリフです。

映画版ではプーの”Where will you be?”からセリフが大きく変わっています。
クリストファーの返事”I’ll be right here.”はプーの頭を指しながらのセリフです。

最も大きなポイントは、「100歳になっても忘れない」という会話部分。
原作ではクリストファーが”Pooh, promise you won’t forget about me, ever. Not even when I’m a hundred.”と話します。
クリストファーが100歳になってもプーは僕のことを忘れないでね、ということをクリストファーが言います。
一方映画では、”I won’t forget about you, Pooh. I promise. Not even when I’m a hundred.”というセリフに。
クリストファーが100歳になっても僕はプーのことを忘れないよ、とクリストファーが言います。
原作ではプーがクリストファーを忘れないという話なのに対し、映画はクリストファーがプーのことを忘れないという話。
この差が、『プー僕』におけるクリストファー・ロビンのその後の人生を示唆しています。

原作を活かした映画の導入

こうして見ると、『プーと大人になった僕』のオープニングが原作の最終章をほぼ踏襲したものであることがわかります。
原作の最終章は全20章ある原作の中でも特に印象的な部分で、暗唱してしまうような部分です。
映画ならではのセリフ変更が行われることで、覚えているような人にはその後のクリストファー・ロビンの成長した人生を暗示してくれています。
なお、最終章のシーンは『くまのプーさん 完全保存版』にもあり、ここではプーとクリストファー・ロビンが2人で歩いていくシーン以降が描かれます。


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コピーライト
(c)Disney. Based on the "Winnie the Pooh" works by A.A, Milne and E.H.Shepard.
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