なぜプーは歌うのか…「プーのララビー」から見るミュージカルの理由

「くまのプーさん」はミュージカル形式のアニメーション作品です。
ミュージカル映画は「突然歌い出す」と言われることが多いですが、なぜプーはミュージカル映画になったのでしょうか。
『ティガームービー』の曲「プーのララビー」にその本質が現れています。

プーのララビー


公式動画はここから始まっていますが、映画ではこれより前のシーンがあります。
是非そちらを観てみてください。

『ティガームービー』でティガーの家族を探す途中、ハチの巣を発見したプーは、家族探しを中断してはちみつを食べに行きます。
はちみつを食べるためにプーが歌うのがこの曲です。

過去に雨雲に変装するなど様々な作戦で蜂蜜を食べようとしてきたプー、今回はどうするのでしょうか。
はじめにふつうに食べようとするも、蜂に手を刺されてしまいます。やはり何らかの作戦が必要なようです。
そこでちょっと考えたプー、子守唄を歌って蜂を眠らせてしまおうという作戦を思いつきます。

さて、ここまでのシーンで既に本当に可愛いプーのしぐさがたくさん出てきます。
ぬいぐるみであるがゆえに意外と軽いプー、そんなプーがジャンプするように木を登っていく動作は、要所要所でふわっとした動きをしておりまさに完璧。
蜂に手を刺されて痛がるプー、枝に上るも落ちかけて体勢を立て直すプー。
『ティガームービー』はどこをとってもプーの動きが完璧に可愛い、本当に素晴らしい作品です。
「シェパードを美術監督にしたような」美しさの中で、キャラクターの愛らしい動きが観客を引き込んでくれます。

詩人プー

話は戻って、プーの子守唄。
この子守唄の歌詞を見てみましょう。
lullabee,bee,tree、singing,stingingなど、短い歌の中でたくさんの韻が踏まれています。
これこそプーの本領発揮。
実は原作においてプーは100エーカーの森1番の天才詩人なのです。
彼の詩は即興です。
直感的な閃きで詩を読むため、詩が閃かず悩んでしまう時もあります。
プーによると、詩の閃き方というものがあるそうです。
はじめに、詩の一フレーズを詠んでみます。すると続きが自然に浮かんできて、それをそのまま詠んでいけば詩になるそうです。

天才詩人であるプーは原作中でよく詩を読んでいますが、原作では地の文も詩的な文章となっています。
原作者A.A.ミルンは著名な散文家でした。
実際、「プーもの」と言われる児童向け作品4冊のうち2冊が詩集、残り2冊が原作と言われる「クマのプーさん」「プー横丁にたった家」です。
上手い詩を自然に入れ込む技術に長けていたミルンは、原作のあちこちに詩的な要素を入れ込みました。

絵本のアニメーション化

この原作をアニメーションにしようとしたのがウォルト・ディズニーでした。
彼はプーという絵本そのものをアニメーション化しようとしたのです。
本の文字を取り入れ、ナレーターというキャラクターを創り出し、「クマのプーさん」という絵本をアニメーションにしていきました。
そして、ミルンの詩的な要素までもを映像化しようとしたのです。
この詩的な要素を音楽として映画に取り入れる、この大役を任されたのがシャーマン兄弟でした。
こうして、ディズニープーはミュージカル作品となり、キャラクターが歌わない部分でも音楽が原作の詩的な要素を表すようになったのです。

なぜプーは歌うのか

もう一度「プーのララビー」を見てみましょう。
プーが歌い出すシーンを観てみると、プーははじめの一フレーズを考えるように歌い、その後閃いたという表情をして歌い出します。


こちらは日本語版。
28秒でプーが歌詞をひらめきます。

まさに、先ほどの詩の作り方と同じです。
ふと口ずさむように詩が浮かび、それを歌うプー。
アニメーションでは、彼の感覚が表情に現れています。

「プーのララビー」は、プーがどうして歌うのかというミュージカル作品に対する問題の答えを、美しく完璧な形で示した名曲です。

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コピーライト
(c)Disney. Based on the "Winnie the Pooh" works by A.A, Milne and E.H.Shepard.
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